第12章 文化祭
みんな集中してる智くんの邪魔をしないようにと思っているんだろう。
静かに智くんが口を開くのを待っていたら、裏方チームの方からワーッと盛り上がる声が聞こえた。
何気なくそちらを見れば、みんなに揉みくちゃにされているカズの姿が目に飛び込んできて。
遠慮なくカズの髪に触れる手を見た瞬間、頭が真っ白になって、何かを考えるより先に体が動いた。
足音も荒くカズの元へ急ぐ。
「気安くカズに触るな」
口から出たのは自分でも分かるくらい不機嫌丸出しの声。
俺の顔を見るなりカズに触ってたやつらが一斉に手を引いた。
「え?翔ちゃん?」
カズが驚いたような声を上げたが、そのまま何も言わず背中から抱き締めた。
カズを腕の中に閉じ込めながら、カズに触れてたやつらを睨みつけると、全員苦笑いでホールドアップした。
“カズは俺のだ!俺以外誰も触るな!”
喉元まで出かかった言葉を無理やり飲み込む。
そんなこと言えるわけない。
ほんの数分前に黙って見守ろうと思ったばかりなのに、俺ってやつは…
醜い独占欲の塊みたいな自分に、自分で呆れてしまう。
軽い自己嫌悪と、それでも消えないカズに触れたやつらへの苛立ちとでため息が止まらない。
何も言えないまま、それでもカズを離すことも出来ずにいたら。
ふいにカズの体からフッと力が抜けて、こてんと俺に寄り掛かってきた。
なんだ?どうした?
不思議に思って視線を下ろすと、カズは首だけ捻って俺を見上げていて。
「翔ちゃんがいなくて心細かったみたい。こうやってそばに居てくれるとやっぱり安心する」
上目遣いでにこっと笑いながらそんな可愛いことを言うから、心臓撃ち抜かれてぶっ倒れるかと思った。