第12章 文化祭
「智、本当に付き合ってないの?」
「うん」
「隠し事はやだよ?」
智とニノは周りの話を全く聞いてないようで、マイペースに会話を続けていて
「だってこれで俺たちが付き合ってることになるなら、ニノたちだって付き合ってることになるよ?ニノ、翔くんと付き合ってるの?俺に隠してる?」
「ううん!付き合ってない!」
ニノがはっきりきっぱり言い切るもんだから、翔が悲しそうな顔になった。
「でしょ?俺たちも一緒!付き合ってない!」
智もニノと同じくらいきっぱりと言い切る。
本当に付き合ってないし、その通りなんだけど。
こうもスパッと言い切られると悲しくなる。
きっと俺も翔と同じような顔になってるだろう。
「分かった、信じる」
「うん」
「何かあったら教えてね」
「ニノもね」
「うん」
手を取り合ってニコニコしてる2人はものすごく可愛いけれど。
翔と目が合う。
たぶん気持ちも同じだろう。
いや、翔たちはお互いに伝わってないだけで両想いではあるから、俺の方がより悲しい気がするけど。
無言で慰め合う俺たちを見て、クラスメイトも何かを察したらしい。
生暖かい目でポンポンと肩を叩かれた。
そんな俺たちには目もくれない2人は
「智も着替えたら?俺手伝うよ?」
「そういえば、まだメイドなの忘れてた」
「ほら、行こ!」
着替えのために手を繋いでカーテンの中に入っていった。
もう着替えちゃうのか…なんて少し残念な気持ちになるけど、智は当日もメイドだもんな。
その時は写真撮るのを絶対忘れないようにしよう。
そんなどうでもいいことを固く誓う。
「よし!じゃあ、智と潤と翔はメイドで決まりな。他も決めちゃおうぜ」
滝沢がチャキチャキ仕切ってどんどん振り分けていく。
翔やニノほどゴネて騒ぐやつはもういなかったから、その後はスムーズに決まっていった。