第12章 文化祭
「翔とニノの入る時間は合わせるからさ」
「うぅ…でも…」
ゴネる翔を宥めるように滝沢が提案する。
「翔ちゃん、やっぱり俺もメイドする?そしたら一緒にいれるから…」
「絶対ダメ!!」
見かねたニノがおずおず声を掛けるが翔は間髪いれずに否定する。
「翔、いい加減諦めろ。表と裏でも同じ時間ならお互い顔は見れるだろ。このままゴネてるとニノがメイドになっちまうぞ」
「うぅぅ…」
翔はしばらく唸っていたけど、ニノが困ったような悲しいような顔をしてるのに気付くと
「…分かった。メイドでいいよ」
諦めたようにため息をついた。
「その代わり絶対絶対カズと時間合わせろよ!」
「分かった分かった」
翔がしつこく念押しするのを軽く受け流してる滝沢に、俺も横から声を掛ける。
「なぁ、俺は智と同じ時間にしてくれる?」
「ああ、最初からそのつもりだけど」
あっさりそんな答えが返ってきて少し戸惑う。
「へ?なんで?」
なんで当然のことみたいに言うんだろう?
「え?だって潤と智も付き合い始めたんだろ?学校中の噂になってるぜ?」
「なっ…!??」
待て待て待て!!
なんだそのツッコミどころしかない噂は。
驚きすぎて言葉が出ずにいたら
「ええっ!?そうなの!?」
俺以上に驚いたっぽいニノが悲鳴みたいな声をあげて
「智ひどい!!なんで俺に教えてくれなかったの!?」
目に涙を浮かべながら智に詰め寄っていく。
「ちょっ…ニノ!落ち着いて!」
「親友だと思ってたのに、なんでそんな大事なこと言ってくれないの?友だちだと思ってたのは俺だけだったの?」
「わー!ニノ!泣かないで!」
目を潤ませてフルフルと震えるニノを智が慌てて抱き締めた。