第12章 文化祭
翔は俯くニノの頰に手を添えてその目を覗き込む。
「カズ、違うって言ったでしょ?気持ち悪いどころかカズは可愛すぎるの。その辺のアイドルなんか足元にも及ばないくらい可愛いんだよ?」
「そんなこと…」
じわじわと頬を赤く染めながらニノが否定しようとするけど、翔は最後まで言わせない。
「そんなことあるの!普通にしてても可愛いのに、メイドの格好なんかして人前に出たら誘拐されちゃうよ…考えただけで胃に穴があきそう。お願いだから、俺のためにカズは裏にいて?」
もはや懇願でしかなくなった翔の言葉に、ニノは耳まで真っ赤になってこくりと頷いた。
翔は安心したように微笑む。
手は頰に添えたままで、見つめ合って…
俺たちの存在なんて忘れてるんだろうな。
ひたすら空気が甘ったるい。
「あいつよく真顔であんなこと言えるよな」
もう呆れを通り越して感心してしまう。
尊敬に近いかもしれない。
「何がすごいって、あれを本気で言ってるってことだよ」
「心から心配してるのは伝わるけど」
「でもあんな甘いセリフがサマになるのはさすが王子だよな」
俺の呟きに滝沢や斗真たちもうんうんと頷いた。
「というわけで、カズは裏方!俺も裏方で!」
さんざんイチャついて満足したのか、しばらくしたら翔が高らかに宣言したが
「いや、翔はメイド」
「何でだよ!?」
「似合うやつは表」
滝沢に容赦なく却下される。
「いやだ!俺もカズと一緒に裏方がいい!カズと離れない!」
駄々っ子か!
こんな姿も今まで見たことないな。
王子どころか3歳児みたいだ。
「それにお前料理出来ないだろ?」
「ジュースをコップに注ぐくらいなら…」
「却下」
確かに翔が裏方に回っても出来ることはあまりないな…むしろ邪魔かも。
ちゃんと運べるかも怪しいところだが、裏方よりはマシだろう。