第12章 文化祭

「“で？”ってなんだよ？」

冷静を装って答えるけど、微妙に視線を合わせられないのは許してほしい。

でも智は目が合わないことは全く気にならないみたいで。

それはそれで寂しい。

「だから、なに揉めてたのか聞いてるの。なんか翔くんが騒いでなかった？」

どうやら智にも聞こえていたらしい。

そりゃ聞こえるか。
あんなペラペラのカーテン１枚挟んだだけだもんな。

「翔がニノにはメイドさせないって言い出したんだよ」

簡潔に答えると

「ああ、ニノも嫌がると思うよ。絶対着ないだろうね」

智はあっさり頷いた。

「えー…」
「そんなぁ…」

周りから落胆の声が上がるが、智はものすごく冷たい目でそいつらを見回すと

「あんなに嫌がってたニノがせっかくメイド服着てくれたのに、みんなノーリアクションだったじゃん。恨むなら反応出来なかった自分たちを恨むんだね」

視線と同じくらい冷たい声でそう言い放った。

薄々気づいてはいたけど、智めちゃくちゃ機嫌悪いな。

それくらいニノが落ち込んでたってことか。

智はニノがみんなに傷付けられたと思ってこんな容赦ない態度を取ってるんだ。

でもさ、ニノが俺たちに可愛いって褒められたかったとは思えない。

ニノが感想求めてんのなんて翔だけだろ？

ってことは、悪いのはニノに見惚れすぎて反応出来なかった翔だけじゃね？

俺たち完全に八つ当たりされてね？

しかもさ、翔のやつ全く戻ってこないとこみると、今頃ニノとラブラブいちゃいちゃしてんじゃないの？

大して悪くないはずの俺たちだけ智に睨まれてさ、なんか理不尽だし不公平だ！！

そうは思っても機嫌の悪い智に向かって、そんな火に油注ぎそうなこと言えないけど。