第12章 文化祭
「誘拐とか!ストーカーとか!ただでさえ可愛くて狙ってるやつが山のようにいるってのに、これ以上変なやつらに目をつけられたらどうしてくれるんだ!」
もうカズに怖い思いはさせたくない。
そのためにはカズをメイドにするのは断固阻止しなければ!
それでも、どうしてもカズにメイドをさせたいやつらも引かないもんだから、そいつらと言い争いになってたら
「翔くん、ちょっといい?」
いつの間にか出てきていた智くんに肩を叩かれた。
まだメイド姿のままの智くんが現れたことで、騒いでたやつも静かになった。
「何?どうしたの?」
さっきはカズしか目に入らなかったが、改めて向き合った智くんもとても可愛い。
でも智くんは眉間にシワを寄せて険しい表情をしていた。
「ニノがめちゃくちゃ落ち込んでる」
「え!?なんで!?」
不機嫌を隠そうともしない智くんの言葉に焦る。
「みんなが無反応だったから、そんなに自分の女装がひどかったのかって」
「そんなわけないじゃん!!」
まさかカズがそんな風に感じていたなんて思わなかった。
カズが可愛すぎることにテンパってしまって、カズの心情を慮る余裕なんてなかったんだ。
「分かってる。どうせニノが可愛すぎて言葉が出なかったとかでしょ?でもそんなの言わなきゃニノには伝わらないよ!ちゃんとフォローしてあげて!」
珍しく声を荒げた智くんはキッと睨むと、カーテンに向けて俺の背中をドンッと押した。