第12章 文化祭
ーSsideー
カーテンが開いてメイド姿のカズが出てきた瞬間、あまりの可愛らしさに心臓が止まるかと思った。
フワフワのワンピースも、フリフリのエプロンも、レースのカチューシャも。
似合ってるなんてもんじゃない。
やっぱりカズは本当に妖精か天使なんじゃないか…って。
そんなことを本気で考えてしまうくらい女装したカズは可憐で可愛かった。
息をするのも忘れて、ただ見惚れていた。
どれくらいそうしていたのか
「翔ちゃん?」
ふいにカズに名前を呼ばれて我に返った。
気付けば教室内は静まり返っていて、全員がカズと智くんを食い入るように見つめている。
カズは不安そうに瞳を揺らしながら智くんにしがみついていて。
その姿がまた庇護欲をそそるというか、とにかく可愛らしくて焦る。
こんな可愛いカズをこれ以上誰にも見せたくない。
慌ててカズと智くんを着替えスペースへ押し込めて、急いでカーテンを閉めた。
ぴっちり閉めたカーテンを背に
「カズは女装させないから」
全員に向かって宣言したら、それまでの静寂が嘘のようにブーイングが起こった。
みんなカズと智くんのメイド姿が見たくてメイド喫茶に決めたんだから、当然のことだろう。
でもここで引くわけにはいかない。
「あんな天使みたいに可愛いカズを不特定多数の前に出すなんて出来ない!何かあったらどうするんだよ!」
正直に白状するなら、俺だってカズのメイド姿は見たかった。
とてもとても見たかった。
だからカズが嫌がってる時も味方をしてあげられなかった。
でも実際に女装したカズは俺の想像なんて遥かに超えるくらいの人間離れした可愛さで。
こんなに可愛いカズを人目にさらすなんて怖くて無理だ。