第12章 文化祭
でも、別に似合ってなくても笑い飛ばしてもらえればそれで良かったのに。
怖いくらいの無反応だった。
あの優しい翔ちゃんまで無言になるくらいおかしかったなんて。
気持ちがどんどん沈んでいく。
「そんなことないよ!ニノは可愛いよ!」
智が一生懸命慰めてくれるけど、みんなの反応を思い出すとそんなの信じられない。
「誰も何も言ってくれなかったじゃん。智はめちゃめちゃ可愛いもん。俺が変だったんだよ」
可愛い智が隣に居たから、俺の気持ち悪さが余計に目立ったのかもしれない。
「こんなすぐ着替えろなんて、翔ちゃん俺の女装なんて見るのも嫌だったのかな···」
「ニノ···」
「そんなに気持ち悪かったのかな···」
口にしてみたら、自分でもびっくりするくらい傷付いて···涙まで出てきた。
高校生の男が女装を褒めてもらえなくて泣くなんてバカみたいだ。
智に見られたくなくて、背中を向けて涙をゴシゴシ擦る。
何度か深呼吸して気持ちを落ち着ける。
似合わないものは仕方ない。
もう二度と女装なんてしなければいいだけだよ。
これで俺をメイドにしたがってたやつらも何も言わなくなるだろ。
もともと女装なんてしたくなかったんだから。
こんなの傷付くようなことじゃない。
でも…嘘でいいから…
翔ちゃんにだけは可愛いって言われたかった…
なんて、バカだな俺。
こんなものさっさと脱いじゃわなきゃ。
それで何でもない顔してみんなのところに戻るんだ。