第12章 文化祭
···え?なに?
みんな確かにこっちを見てるのに、誰も何も言ってくれない。
今までは歓声があがったり、笑いが起こったりしてたのに。
みんな真顔で微動だにしない。
それなのに視線だけは痛いほど突き刺さるから怖くなる。
思わず智の腕にしがみついたら、智も戸惑った顔で俺を見た。
なんで誰も何も言ってくれないんだろう。
不安になって翔ちゃんを探したら、翔ちゃんも目を見開いて固まっていた。
「翔ちゃん?」
呼び掛けてみたら、はっと我に返った顔をして、すごい勢いで近付いてきた。
そのままガシッと腕を掴まれて、半ば引きずられるようにカーテンの中に押し込まれる。
「な、なに?」
「もう着替えていいよ。あ、智くんも」
目を白黒させる俺に翔ちゃんはにっこり笑ったけど、目が笑ってない。
なんか翔ちゃんが怖い。
翔ちゃんは智も入ったことを確認したら、さっさとカーテンを閉めて出ていってしまった。
予想してなかった状況にしばらく呆然としてしまう。
カーテンの向こうで翔ちゃんが何か言ってまた教室がざわつき始めたけど、俺は頭がうまく働かなくてみんなが何を話しているのかまでは分からなかった。
なんだかすごくショックで。
すごく悲しかった。
「俺···そんなに変だった···?」
誰も何も言えないくらい?
笑い飛ばすことも出来ないくらい?
自分のこと可愛いと思ってた訳じゃない。
それでもちょっとだけ、褒めてもらえるかなって期待しちゃってたのかも。
自意識過剰。
俺ってば恥ずかしいやつだ。