第12章 文化祭
自分がどうなってるかは分からないけど、目の前の智はめちゃくちゃ可愛くなってた。
「智!超可愛い!本当の女の子みたい!」
むしろ女の子より可愛いかも!
「こっち向いて、笑って」
写真を撮って見せてあげるけど、智は微妙な顔してる。
「自分じゃ分かんないな。女の格好した自分にしか見えない」
「大丈夫!めちゃめちゃ可愛いから♡」
思わずぎゅうっと抱き締めたら
「ニノもめちゃめちゃ可愛いよ」
智がふにゃっと笑って俺のこと褒めてくれた。
「本当?」
今度は智がスマホで写真を撮って見せてくれる。
けど確かに智の言う通り、自分じゃ似合ってるのか分からないな。
「変じゃない?」
「すっごく可愛い。きっと翔くんも喜ぶよ」
「なんで翔ちゃんが喜ぶの?」
俺が女装して喜ぶわけないじゃん。
智ったらなに言ってんだろ。
でも···
翔ちゃんには褒めてほしいと思ってしまう。
男だから別に可愛いって言われたい願望なんてないけどさ。
翔ちゃんに言われるのは嬉しいんだ。
だって好きなんだもん。
好きな人に褒められたら嬉しいよね。
翔ちゃん、なんて言うかな。
考えたらちょっとドキドキしてきた。
「ニノ、大丈夫?開けるよ?」
緊張が顔に出たのか、智が心配そうに俺の手を取る。
「···うん、大丈夫」
翔ちゃんは優しいから、多少似合ってなくてもきっと褒めてくれる。
大丈夫、大丈夫!
自分に言い聞かせながら、深呼吸して。
智に手を引かれて、ドキドキしながらカーテンから出た瞬間…
それまでざわついていた教室がシン···と静まり返った。