第12章 文化祭
「翔ちゃん…俺たち、みんなに嫌われてるの?」
ニノが目を潤ませながら翔に尋ねる。
「そんなことないよ。みんなカズのことも智くんのことも大切なクラスメイトだと思ってるよ。ね?」
翔はニノに優しく言い聞かせると、最後は周りに同意を求めた。
みんな一斉に首を大きく縦に振ると
「2人のこと嫌いなわけない!」
「いじめてもないよ!」
「むしろ大好きだから!」
ニノの誤解を解こうと必死に言い募る。
大好きだと叫んだやつは、翔にものすごい目で睨まれてたけど。
「ほんと?嫌ってない?」
みんなの必死さが伝わったのか、ニノは顔を上げると、嘘じゃないか確認するみたいに一人一人の目をじっと見つめる。
「イジメでもない?」
まだウルウルしてる瞳で見つめられたもんだから、みんな真っ赤になってコクコクと頷く。
全員が頷くのを見届けたらニノも納得したのか、やっとニコッと笑った。
ニノの笑顔にみんなホッとしたのが分かる。
「じゃあ、メイドはやんなくていいよね」
でもニノがニコニコしたままそう続けると
「いや、それはまた違う話だよ」
「メイドはやってもらわないと」
みんなもそれは譲れないのか真顔で否定した。
話が振り出しに戻ったな。
ニノはまた不機嫌になって膨れっ面だ。
どうでもいいけど、翔はいつまでニノを抱き締めてんだか…。
どちらも折れず、なんとも言えない沈黙が流れ始めた頃
「よし、分かった!」
クラス委員の滝沢が空気を変えるように大きな声でみんなの注意を引いた。
「たしかにこんな一方的にニノと大野だけに押し付けるのは不公平だよ。だから一度全員で試着しよう。全員着てみて、その上で話し合って決める!それならどう?」
そう提案して、ニノに同意を求める。
「···うん···女装はやだけど···みんな平等にするならいいよ」
完全に納得した訳じゃなさそうだけど、それならまぁ公平かと思ったのか、ニノはしぶしぶ了承した。