第12章 文化祭
ーMsideー
恐らくクラスのほぼ全員がニノと智のメイド姿を見たいと思って、それで即決したであろうメイド喫茶。
でも肝心のニノがメイドを断固拒否して、さっきからずっとキャンキャン吠えてる。
本人は必死なんだろうけど子犬みたいで可愛らしくて。
周りのやつらも宥めつつ顔がデレてる。
こんな状況で、いつもなら真っ先にかばいに行くはずの翔は、なんだか複雑な顔をしてニノと取り巻くクラスメイトたちを眺めていた。
絶対、翔もニノのメイド姿が見たくて仕方ないんだと思う。
でもあんだけニノが嫌がってるから無理強いも出来ないし、でもニノの味方をしたらメイド姿が見れないしで、あんな顔になってんだろう。
まぁ、俺もね。
表面上はくだらねーって顔してるけど、内心は智のメイド姿が見たいと思ってるから翔と同じなんだけどね。
ギャーギャー騒ぐみんなを輪の外から客観的に見物してたら、ふいにニノの声のトーンが変わった。
「…もしかして俺たちイジメられてるの?」
本気でそう思ったのか、声にも表情にも不安が滲み出ていて。
泣きそうな顔で智にくっついた。
ニノたちを取り囲んでたやつらが慌てふためく中
「カズっ」
翔がすっ飛んでいくと、ニノは智から離れて翔にしがみついた。
翔は当然のように優しく抱き締めてやって。
2人があまりにも自然に抱き合うから、誰も何も言えず黙って見守ってしまう。
智だけは全く動じず、翔の腕の中にいるニノの頭をよしよしと撫でてやってた。