第11章 誕生祝い to JUN
智が何を言いたいのかさっぱり分からないけど
「あのね…あの…」
一生懸命言葉にしようと頑張っているのは感じられたから、黙って待つことにした。
視線を泳がせながら口を開けたり閉じたりする様を、なんか金魚みたいだなんて思いながらしばらく見ていたら。
やっと腹を括ったのか、じっと俺を見つめて
「潤、誕生日おめでとう」
お祝いの言葉を口にした。
…へ?
散々ためて言う言葉がそれなの?
今さら?
…なんて、正直思わなくもなかったけど。
真っ赤な顔して伝えてくれた智が可愛くて。
「ありがとう」
お礼を言いながら自然と頰が緩むのを感じた。
俺の笑顔に何か緊張をほぐす効果でもあったのか、智も少しはにかむと
「あと、いつも美味しい弁当作ってくれて、ありがと///」
照れ臭そうに頰を染めながら微笑んだ。
いや、だからいきなりそんな可愛い顔すんのやめろって!
今、口を開いたらなんかヤバイことを口走りそうな気がして何も答えられない。
でも智は特に返事は求めていなかったようで、カバンをごそごそ漁ると何かを取り出した。
「こんなのお礼になるか分かんないけど…これ…誕生日プレゼント」
もじもじしながら智が差し出したのは、真っ白な紙に包まれた四角いもの。
プレゼントと言う割にはリボンも何にも掛かってない、素っ気ないくらいシンプルな包みだ。
「え?そんなんいいのに…」
「いや、ほんとに大したものじゃないから」
まさかプレゼントを用意してくれてるなんて思わなくて、とっさに遠慮してしまう。
でも智は出した手を引かなくて。
せっかく用意してくれたものを受け取らないのは失礼かと思い直して
「ありがとう…なんか悪いな」
素直に受け取った。