第11章 誕生祝い to JUN
ふいにニノが顔を上げると、翔くんを見て可愛く手を振った。
「そっちは順調?」
「うん!」
ぼんやりしてたくせに、ニノに声を掛けられたら急にシャキッとした翔くんが面白い。
「カズたちは?」
「順調だよ♪いい匂いしてきたでしょ?」
ニノの言う通り部屋には食欲をそそるいい匂いが漂ってきてる。
「うん!してる!」
「翔ちゃんたちも頑張ってね♡」
ニノに応援された翔くんは急にやる気が出たらしい。
「智くん!次は何したらいい?」
分かりやすすぎる態度の変化に智も苦笑いだ。
「じゃあ、それをそっちに…そうそう。で、これをそこにさ…」
「これがどこだって?」
「それをあそこに?」
あれとかそことか…智からの指示は全部こそあど言葉だから、何度も翔くんと首を捻りながら、何とか智の言いたいことを汲み取っていく。
分からないなりに作業を続けてたら少しずつ形が見えてきて。
「すげぇ…」
部屋の一角になんともフォトジェニックな空間が出来上がった時には、思わず感嘆の声を上げてしまった。
ど真ん中には“HAPPY BIRTHDAY JUN"の文字と潤の横顔のシルエット。
智が黒い紙から切り出して作ったものだ。
下書きもなくサクサク切ったとは思えないほどの完成度。
シルエットだけなのにちゃんと潤だと分かるのもさすがだ。
その切り絵と切り文字の周りを囲うように、買ってきたものに智がアレコレ手を加えたガーラントや飾りがバランスよく配置されて。
重りをつけた風船がふわふわ揺れて更に華やかさを演出している。
俺には、誕生日会の飾り=折り紙の輪っか繋げたやつ…くらいの貧困なイメージしかなかったから、ちょっと感動してしまう。
「どうかな?」
「すごい!すごいよ!智くん!」
「マジで感動するレベル!智天才!」
智がちょっと不安そうに確認するから、翔くんと褒めちぎったら
「大袈裟だよ…」
智は恥ずかしそうに謙遜した。
でもお世辞でもなんでもなくて本気ですごい。
何より智の潤への想いが溢れてる。
俺でもこんだけ感動するんだから、潤はもっともっと感激するんじゃないかな。
潤の反応を想像するだけでワクワクした。