第11章 誕生祝い to JUN
ーAsideー
「雅紀、これをそこに」
「ここ?」
「そう!もうちょっと右…そこ!」
さっきから智に言われるがままに動いてる。
どんな風になるのか完成図が想像出来てないから、それしか出来ないんだ。
智は何やら描いたり切ったりしながら、次々指示を出してくれてる。
「翔くんはそっちに…翔くん?」
智は翔くんにも指示を出そうとするけど、翔くんはキッチンをじっと見つめて動かない。
智の声も聞こえてないみたい。
視線の先には楽しそうにお喋りしながら料理してるニノと潤。
羨ましそうというかもの悲しそうというか、何とも言えない視線を2人に向けている。
確かに仲良さげだけどさ。
2人の話してる内容、どう聞いても主婦同士の情報交換だよ?
ニノがあんなに一生懸命なのは、翔くんに美味しいもの作ってあげたいからでしょ?
翔くんにもちゃんと聞こえてるはずなのに、それでも妬けちゃうんだなぁ。
じゃあ料理班に行けばいいじゃんって思うけど、聞いたところによると翔くんは壊滅的に料理が出来ないらしい。
さっきの潤の態度からすると、翔くんがどんなにやりたがっても受け入れることはないだろうし。
翔くんも分かってるから黙って見てるんだよね。
可哀想だけど、どうやっても料理を手伝えないなら、早く諦めてこっちに集中してほしい…なんて思うのは意地悪かな。
でもさ、作業に集中してるフリの智も、実はあっちの2人のこと意識してるよね。
翔くんほどあからさまじゃないけど、やっぱり気になるんだろうね。
全然気にしてないですよーって顔しながら、チラチラと様子を伺う様子は可愛らしい。
智も恋するとこんなになっちゃうんだなぁ。
ニノのこと好きだって言ってたけど、こんな様子見ちゃうとやっぱりニノへの想いは恋ではなかったんだろうなって思う。
智も自分で言ってたもんね。
ものすごく大好きで大切にしてるのは見てて分かるけど、好きの種類が違うんだろうな。