第11章 誕生祝い to JUN
-Sside-
風船を持ったカズは本当に本当に可愛くて。
実は妖精で、このまま空に飛んで行ってしまうんじゃないかって、けっこう本気で心配になった。
繋いだ手はあったかくて、当たり前なんだけどちゃんと人間なんだって実感出来て安心する。
スーパーの中も手を繋いだまま歩く。
「なに買うの?」
「これ、潤に頼まれたもの」
「えっと野菜…サラダ用かな?あと、お肉と、シーフードミックスと、冷凍ポテト?」
2人でスマホのメモを覗き込んで
「なんかパスタ作るって。あと肉焼くって言ってたかな?」
「そうなんだ。楽しみ♪」
「じゃあ野菜からね。レタス、ミニトマト、キュウリ…」
俺が読み上げたものを、カズがひょいひょいと雅紀の押すカートに入れていく。
手を繋いで買い物…なんか今の俺たち新婚さんみたいじゃない?
こんな妖精みたいに可愛い子が奥さんなんて幸せすぎじゃない?
…なんて。
妄想しては頰が緩むのが止められない。
「翔くん、気持ちは分かるけどさ。顔、もうちょっと気をつけよ?」
「さすがにヤバイよ?」
冷静な智くんと雅紀の声に、2人きりではなかったことを思い出す。
にやけてた自覚はあるけどそんなにヤバかったのか?
「一瞬俺たちのこと忘れてたでしょ」
「そんなことないよ!」
ジト目の雅紀に慌てて否定するけど、信じてもらえてなさそうだ。
「顔がどしたの?翔ちゃんがかっこよすぎてヤバイって話?」
カズは商品を選んでたから、俺の表情は見えてなかったらしい。
きょとんと首を傾げながら、そんな嬉しいことを言ってくれる。
「はいはい、そうですね」
「ニノの翔くんは世界一かっこいいもんね」
ニヤニヤした智くんと雅紀が揶揄うと
「俺のじゃないけど翔ちゃんは宇宙一かっこいいもん!」
カズは赤い顔で言い返した。
つられて顔が赤くなるのが分かる。
そんな俺たちを見比べると
「はいはい。さっさと買い物済ませよ!潤が待ちくたびれちゃう」
自分でふったくせに、雅紀はさらりと流してスタスタ歩き始めた。