第11章 誕生祝い to JUN
「そんな顔するなら翔もバイトしたらいいじゃん」
「バイトはしない」
苦い顔になっちゃってる翔くんに潤が笑いながら提案すると、翔くんは即答する。
「なんで?ウェイターやれば翔もニノにカッコいいって言ってもらえるんじゃない?」
あんまりきっぱり断るから潤は不思議そうだ。
すると黙って聞いてたニノが口を挟んだ。
「翔ちゃんは今のままで十分すぎるくらいカッコいいもん。バイトなんてしなくても、いくらでもカッコいいって言うよ?俺に褒められても嬉しくないかもだけど…」
「カズに褒めてもらえるのが一番嬉しいよ」
翔くんが本当に嬉しそうに笑うと、ニノは照れたようにはにかんだ。
「それにバイトしたらカズと過ごせる時間が減っちゃうだろ?」
「へーへー。ごちそうさま」
翔くんが当然のようにそう言うと、潤はげんなりした。
「早くケーキ食べよ!いただきまーす」
「こんなにご馳走になってなんだか申し訳ないな」
俺がフォークを握ると、潤は申し訳なさそうな顔をしたけど
「うまい!」
一口食べて顔を綻ばせた。
子どもみたいに喜ぶ姿が可愛い。
普段カッコいいのに、こういうのズルい。
ニノが言うギャップ萌えってやつ。
「はんぶんこしないで良くなったね」
「…2種類どころじゃなく食べれるね」
隣では楽しそうなニノに対して、翔くんが明らかにがっかりしてる。
はんぶんこしたかったんだろうなぁ。
「はい、翔ちゃん♡あーん♡」
でもそんなの気付かないニノが翔くんにケーキをすくって差し出すと、翔くんは途端にデレた。
「あーん…うん、本当だ!美味しい!」
「ね♡美味しいよね♡」
「はい、カズもあーん」
「あーん♡」
そのまま交互に食べさせ合ってる。
可愛いし微笑ましいけど、時々ちらりとこちらを見る雅紀の視線が気になる。
いつもの光景っちゃ光景だけど、わざわざ仕事場に押しかけられた上にこんなの見せつけられる雅紀が気の毒に思えた。