第2章 友だち
いつだって堂々としていた翔は、恋愛になるとかなりのヘタレだった。
好きな相手が同じクラスにいるというのに、話し掛けることすら出来ないらしい。
ただ見ているだけ。
クラスメイトだし、男同士だし、普通に話し掛けりゃいいのに。
翔は人見知りとは無縁の性格だし、誰とだって仲良くなれる。
それなのに、二宮が相手になると途端に出来ないらしい。
話し掛ければ?って言っても、出来ないと拗ねた顔をする。
そんな翔を見るのは初めてだった。
翔が好きになった相手が気になって、自然と俺も二宮を観察するようになっていた。
二宮は確かに可愛い顔をしている。
二宮といつも一緒にいる大野も、これまた可愛い容姿をしてるもんだから二人揃うと目立つ。
二宮と大野の名前と顔は、あっという間に学校中に知れ渡った。
でも本人たちは無自覚なようだった。
まさか自分たちが注目されているとは想像もしていないのだろう。
よく教室の隅でじゃれ合っている。
二宮は大野に対してスキンシップが多い。
大野はいつもされるがままだけど、その表情はどこか嬉しそうで。
しばらく見ているうちに気付いた。
たぶん大野は二宮を好きなんだろう。
大野が二宮を見る目に既視感があった。
それは俺が翔に向けるものと似ていて。
ああ、好きなんだろうなと思った。
そして、やっぱり自分の想いを相手に告げる気がないのも分かった。
俺たちは少し似ているかもしれない。
親友という誰よりも近い位置で
好きという気持ちを隠して側にいる。
俺は一度も話したことのない大野に、親近感がわくのを感じていた。