第2章 友だち
自分の気持ちを認めたところで、絶対に叶わないって分かってた。
だって翔が男に興味ないことは嫌ってほど知ってる。
俺のことを親友以上に思っていないこともよく分かってる。
それなのに、翔が「男に好かれても嬉しくない」と言う度に胸が痛かった。
俺の気持ちまで否定されているようで毎回傷付いていた。
それでも俺は臆病者だから。
翔との関係を崩すことが怖くて
親友というポジションを失いたくなくて
友だちでいいから、ずっと隣にいたくて
自分の気持ちは一生告げないと決めた。
俺たちは中学の間にどんどん身長が伸びて、可愛いと言われることはなくなった。
それにしたがって、近隣の学校の女子から声をかけられることが増えた。
翔は全部断っていたが、俺は適当に付き合ったり遊んだりしていた。
女の子と付き合えば、やっぱり翔への想いは気のせいだったと思えるんじゃないかと思って。
でも俺の気持ちは変わることがなかった。
女の子たちは可愛いけど、それだけだった。
どんなに可愛い子でも、性格が良くても、本気で好きになることは出来なかった。
翔への気持ちを消すことは出来なかったけど、翔に恋人や好きな人が出来ることもなくて。
そのまま中学を卒業した俺たちは、高校になってもこのまま何も変わらないんじゃないか···
いつの間にか、そんな風に考えてしまっていた。
あの瞬間まで。
翔が一目惚れした瞬間、俺は失恋した。
もともと伝えるつもりはなかった。
叶うことはないと分かっていた。
いつか翔に好きな人が出来たら応援しよう
恋人が出来たら笑って祝福しよう
そう決めていた。
それでも、現実にその日がやってくると俺は動揺した。
まさか翔が男を好きになるなんて···
最初から諦めないで気持ちをぶつけていたら、
もしかして···
今さら後悔したって遅い。
それに伝えたところで、自分の恋が叶っていたとはとても思えない。
それでも···
もしもを考えてしまっては自己嫌悪に陥る。
翔にはこんな想いしてほしくないな。
翔には笑顔でいてほしい。
俺は告白なんかしなくて良かったんだって
そう思えるくらい、幸せになってほしい。
自分勝手な願いだって分かってるけど。
俺は胸の痛みを消すことが出来ないまま、ただ翔の幸せを祈った。