第11章 誕生祝い to JUN
「謝んなくていいよ」
それどころか気持ちをはっきりさせてくれたことにお礼を言いたいくらいだ。
「でも···俺···」
そう言われても納得出来ないのか、眉毛が下がったままの智が可愛くて。
「ふふっ」
つい笑みがこぼれた。
「なんで笑ってんの?ショックでおかしくなってるの?」
智は心底心配してくれてるようだったけど
「失礼な···智が可愛いなと思っただけだよ」
「はぁっ!?」
本当のことを言っただけなのに、智は赤い顔して怒り出した。
「人が悪いことしたって思って真剣に謝ってるのに、なんでそんなっ···」
「言っとくけど馬鹿になんてしてねーからな?本当に可愛いと思ったんだよ」
「なっ···」
智は口をパクパクさせるが言葉にならないようだ。
そんな智に構わず話を続ける。
「さっきも言ったけど、本当に謝る必要なんてないから」
「···なんで?」
智は口をパクパクさせるのをやめると、不思議そうな顔になった。
「俺の中で翔への気持ちは完全に消化出来てたみたいだ。さっき、はっきり分かった」
「そう···なの···?」
智はまだちょっと疑ってるみたいだけど。
「ああ。あんだけはっきり言われても俺なんとも思わなかったんだよ。いつの間にか俺の気持ちはただの友情に戻ってたんだな」
どんなに苦しくても隠して隠して···最後まで隠し通した翔への恋心。
伝えることはないまま、いつの間にか消えていた想い。
悔いがないと言ったら嘘になるけれど、告げなくてよかったんだと心から思ってる。
強がりでもなんでもない。
それが本心だった。