第11章 誕生祝い to JUN
「カズ、どうしたんだと思う?」
「うーん」
潤も首をかしげる。
「心配なのは分かるけどさ、考えても分かんないから戻ってくるのを待とうぜ。きっと智が聞き出してくれてるからさ」
「···そうだな」
こんな時にカズが頼るのは智くんで。
それが俺じゃないことがすごく悔しい。
まだ俺はカズの中でそこまでの存在になれてないってことだから。
なんだか無力感に襲われる。
「あんま考えすぎんなよ」
潤はポンと俺の肩をたたくと
「とりあえず2人が戻ってくるまで、雅紀にさっき決まったこと伝えとこうぜ」
話を変えてくれる。
俺の気を紛らわそうとしてくれてるんだろう。
「そう言えば勝手に色々決めちゃったけど、雅紀が一番忙しいもんな」
潤の気遣いに感謝して、それに乗っかる。
「とりあえずLINEしてみる?」
「電話のが早いかも···あ、でもバイト中か?」
どうしたってカズのことが頭から離れることはなかったけど、雅紀に連絡したり、誕生日会の計画をもっと詰めたりして、ひたすらカズが戻ってくるのを待った。
どれくらい待ったのか。
俺的にはかなり長く感じたけど、実際はたぶんそんなに経ってないのかな。
ガラッと美術室のドアが開いた。
「ただいまー」
「やっ···待って、智!」
平常通りの智くんと、なにやらジタバタしているカズ。
逃げようとしてるみたいに見えるけど、智くんにガッチリ手首を掴まれててどうにもならないみたいだ。
智くんは暴れるカズをものともせずに、俺の前まで連れてきた。
じっと俺を見つめる智くんと、相変わらず目を合わせてくれないカズ。
変わらないカズの態度に悲しくなる。
「あのね、翔くんに聞きたいことがあるんだ」
口を開いたのは智くん。
何を聞かれるのか分からなくて、少し身構えてしまう。