第11章 誕生祝い to JUN
智は動揺をごまかすように俺に背中を向けると、ごそごそとカバンを漁り始めた。
そこから取り出したのは見覚えのあるパン。
「お前またこんなんしか食わないで!ちゃんと食えって言っただろ!」
ぱっとそれを取り上げる。
「だって···」
「ったく、仕方ねぇな!ほら!」
口を尖らせて言い訳しようとするから、ひょいっと智の目の前に弁当の包みを差し出した。
途端に智の顔がパァッと明るくなる。
「弁当作ってきてくれたの?」
「絶対ちゃんと食ってないと思ったんだよ」
「わぁ!俺ずっと潤の弁当が食べたかったんだよ。だからめっちゃ嬉しい!ありがと!」
目をキラキラさせてにこりと笑うと、弁当箱を両手で受け取った。
急に素直になんなよ!
不意打ちはやめてくれ!
ストレートな言葉とキラキラした笑顔に、今度は俺が動揺してしまう。
顔が赤くなってませんように!
「ほら、手洗ってこい」
「はーい」
智に手を洗いに行かせてる間に弁当をすぐ食べられるようにセットして、お茶も用意する。
智はその前に座ると
「いただきます!」
手を合わせて、元気よく食べ始めた。
「これこれ!あー、うまいー!」
「ははっ、そりゃ良かった」
あんまりしみじみと言うから笑ってしまう。
これだけ喜んでもらえると、しんどい体にムチ打って作ってきた甲斐がある。
「俺さ、本当に潤の弁当が恋しかったんだよ」
恋しかったのは俺の作る弁当か。
でも、いいや。
それだって、すげー嬉しいから。
「また毎日作ってくるよ」
「マジで?やった!!」
智も嬉しそうに笑ってて。
久しぶりに智と向き合うこの時間が、しみじみ幸せだった。