第11章 誕生祝い to JUN
「おはよー、翔ちゃん」
「おはよう、カズ」
いつもの待ち合わせ場所には今日も翔ちゃんが先に来ていて。
振り向いた翔ちゃんの視線が俺の手元に注がれた。
「カズ、それ···」
「昨日約束したお弁当、作ってきた」
「本当に作ってくれたんだ」
あんまりじっと凝視してるから緊張してくる。
もしかして、その場のノリで言っただけだったのかな。
本当に作ってきちゃったけど、引いてたらどうしよう···
不安になってお弁当の入った保冷バッグをぎゅうっと握り締めた。
「ヤバい···めちゃくちゃ嬉しい···」
長い沈黙の後、ポツリと翔ちゃんが呟いて。
いつの間にか俯いていた顔を上げたら、ちょっと赤い顔で口元を手で覆ってる翔ちゃんと目が合った。
「嬉しい?」
「うん、嬉しすぎて倒れそう」
「本当に?」
よっぽど不安が顔に出てたのかな。
「本当だって!本当にめちゃくちゃ嬉しくて泣きそうなくらい!」
「大袈裟だよ///」
翔ちゃんはちゃんと言葉にして嬉しいよって伝えてくれた。
「あー、早く昼にならないかな!早く見たい!食べたい!!」
「普通だからね?あんまり期待しないでね···美味しいかも分からないし···」
「カズが作ってくれたんだから美味しいに決まってる」
「そんなことないよ///」
「そんなことあるの!本当に楽しみ!」
そんな風に言ってもらえて、嬉しいけど照れる。
翔ちゃんはすっと俺の手から保冷バッグを取り上げると、そのまま持ってくれた。
「重くない?」
「全然!これくらいさせて?」
「ありがと」
「どういたしまして」
隣を歩く翔ちゃんは鼻歌でも歌いそうなくらい機嫌が良くて。
本当に喜んでくれてるって分かる。
···良かった!
心からホッとする。
でもあんまり期待されちゃうと、それはそれでハードルが上がってドキドキするな。
早くお昼になってほしいような、なってほしくないような。
複雑な気持ちになりながら、図書館へ向かった。