第10章 夏休み4
みんながシートを敷いてスイカをセットしてくれてる間に
「ニノ目隠しするからこっちおいで」
ニノに棒を手渡して目隠しをする。
「動画撮って翔くんに送ろうね。上手に割って自慢しちゃお?」
「うん!雅紀、動画撮ってー!翔ちゃんに送るんだからちゃんと撮ってね!」
ニノがいつもの調子で雅紀に声を掛ける。
甘えの見えるちょっと横柄な態度は、ニノが雅紀にだけ見せるいつものもので。
「分かったよ!もう!」
仕方ないなーなんて。
雅紀もいつものように言い返しながらも、どこか安心したように笑った。
「当たったのに割れなかったー!」
「力無さすぎじゃね?俺が割ってやるよ!」
「だっさ!全然当たってないじゃん!」
「ニノが嘘の方向言うからだろ!」
すっかり元に戻ったニノと雅紀が元気にギャーギャー言い合ってる間にも、部員たちによって少しずつスイカにヒビが入っていき。
「智!右!右!」
「行き過ぎ!ちょっと下がって!」
「そこ!いけ!」
ニノたちに言われるままに俺が振り下ろした棒はスイカを直撃した。
「やったー!智すごーい!」
目隠しをとると、自分のことのように喜ぶニノの可愛い笑顔と割れたスイカが目に入る。
「智さ、力ありすぎじゃね?」
雅紀が苦笑いするほどぐちゃぐちゃになったスイカに、俺も笑うしかない。
「ごめーん」
「いいよいいよ、味に変わりはないって」
「よし、食べようぜ」
ボロボロのスイカをトレーに移すと、わっとみんなで手を伸ばして手づかみでかじりつく。
「甘い!」
「おいしい!」
今度はニノも嘘のない笑顔で美味しそうに食べていて。
その笑顔も雅紀が写真におさめてた。