第10章 夏休み4
『もしもし、カズ?外で遊んでるのに電話してごめんね』
翔くんからの電話は今日もビデオ通話で。
「ううん、翔ちゃんの顔が見れて嬉しい」
翔くんの顔を見るなり、ニノは泣きそうな顔で笑った。
『雅紀が今日の写真送ってくれてね。見てたら声が聞きたくなっちゃって···でもカズに掛けても出ないから雅紀に掛けちゃった』
「あ、スマホ···バッグに入れっぱなしだ。ごめんね」
『ううん、こっちこそ』
ニノが元気がないのが画面越しでも伝わったんだろう。
『カズ、バーベキュー楽しい?』
翔くんが心配そうな声になる。
「うん、楽しい。でも···」
ニノの顔から笑顔が消えた。
「翔ちゃんと一緒に来たかった···翔ちゃんとバーベキューしたかったな···」
ニノがそう呟いた瞬間の翔くんの顔!
デレッデレなんだけど!
嬉しさが全面に出ちゃってるよ。
「···ワガママ言ってごめんなさい」
目を伏せてるニノは翔くんの表情には気付かずに、しょんぼり謝る。
俺や雅紀にワガママって言われたのそんなに気にしてるのか。
可哀想だったな。
『へ?ワガママ?何が?』
一方、言われた翔くんはキョトンとしている。
きっと翔くんからしたら、ニノの言葉はただただ嬉しいだけのもので。
ワガママでもなんでもないだろうから、本当に分からないんだろう。
「え?」
翔くんにつられるようにニノもキョトン顔になった。