第10章 夏休み4
みんなで食べたものの片付けをして。
また川で遊んでから、先輩がおもむろにスイカを取り出した。
「海でやり損ねたスイカ割りしようぜ」
わぁっと盛り上がって準備を始める中
「スイカ割り楽しそうだね」
「うん···でも翔ちゃんとしたかったな」
ニノはやっぱり浮かない顔で。
さっきからニノは何してても“翔ちゃん翔ちゃん”って、そればっかりになっちゃってる。
翔くん居なくてさみしいんだろうし、雅紀の発言でよけいに会いたくなっちゃったのかもだけど。
あんまりそればっか言うから、バスケ部のみんなもちょっと困り顔だ。
「ニノ、あんまワガママ言わないの。俺だけに言うならいいけど、みんなもいるんだから···みんな困っちゃうよ」
「···ごめんなさい」
自分でも自分の態度がよくないことは分かってるんだろう。
あまりきつく聞こえないように言ったつもりだけど、ニノが泣きそうな声で謝るから俺まで悲しくなる。
またまたしょんぼりしてしまったニノに
「まーまー!俺たちは気にしてないから!」
「櫻井がいなくてさみしいんだよね?」
「悪いけど俺たちで我慢して?ね?」
みんなが励ますように声を掛けてくれる。
「···うん、我慢する」
「えらいえらい!」
「ほら、やろう!」
「ニノちゃんが一番ね!」
ニノはかなり失礼なこと言ってるはずなのに、誰も怒らない。
本当に優しい人ばかりだ。
ニノに目隠しをしようとしてたら
「ちょっと待って!翔くんからニノに電話」
雅紀が大きな声を出した。
「翔ちゃん?なんで雅紀に?」
「直接聞きなよ。はい」
首を傾げるニノに、雅紀が自分のスマホを渡した。