第10章 夏休み4
あー!本当にバカだー!
せっかくニノが翔くんのこと忘れて楽しんでたのに、わざわざ思い出させちゃったよ。
今、翔くんは関係ないのに。
なんでわざわざ翔くんの名前出しちゃうかな。
それもニノが傷付くって分かりきってる意地悪な言葉付きで。
「ごめん!うそ!今のなし!翔くんはそんなことくらいでニノのこと嫌わないから!」
慌てて取り消しても、一度口から出てしまった言葉は消えない。
「······ごめん」
ニノが俯いたまま小さな声で謝る。
あのニノが俺にこんな素直に謝るなんて相当だよ。
「いや、今のは俺が悪い!ごめん!」
黙って力なく首を振るニノの姿に胸が痛くなる。
分かってたのに。
翔くんに会えなくてニノの心がいつもよりちょっと弱ってること。
翔くんにも“ニノのことは任せて”とか言ったのに。
俺が傷付けちゃ意味ないじゃん。
「ニノちゃん、すぐ焼きそば作るからね!」
「その後はマシュマロ焼こ!」
「美味しいコーヒーも淹れてあげる!」
どよんと落ち込んだ空気を察して、みんなが明るく声を掛けてくれる。
「うん···ありがと」
みんなの気遣いを感じたのか、ニノは顔をあげると小さな声でお礼を言ってちょっとだけ笑顔を見せた。