第10章 夏休み4
今回バーベキューを提案してくれた先輩はアウトドア一家らしく、お兄さんとそのお友だちと手際よく作業を進めていく。
俺たちにも分かりやすく指示を出してくれて、あっという間に準備が整った。
肉や野菜は事前に担当分けしてて、それぞれが下準備してきてるから、あとは焼いて食べるだけだ。
「雅紀ー!見て見て!釣れた!」
智とニノがバケツを持って走ってくる。
見せてくれたバケツの中には魚が数匹。
「すごいじゃん!」
「鮎か。よし、捌いてあげるから焼いて食べよう」
一緒にバケツを覗き込んだ先輩のお兄さんがそう言うと
「いいの?やった!ありがとう!」
智が本当に嬉しそうに喜んだ。
「何か手伝うことある?」
ニノと智も手伝おうとするが
「いいよいいよ。あとは焼くだけだし」
「火の近くは暑いからね」
「出来たら呼ぶからもうちょっと遊んでおいで」
やっぱりみんなこの2人に甘い。
「いいの?」
「いいよ。でも遠くには行かないようにね」
「川の深いところにも行っちゃダメだよ」
「はーい!」
まるで小さい子に言い聞かせるような注意事項に2人は良い返事で答える。
再び川へ向かったニノたちに、また先輩たちがさりげなく付いていってくれた。
ニノたちはテントから見える浅いところで泳がずに足だけつけて水のかけっこをしたりしてる。
よしよし、ちゃんと言いつけを守ってるな。
楽しそうなニノたちを見ながら汗だくになって肉を焼く俺。
なんか不公平じゃね?と思わなくもない。
いや、この焼く作業も楽しいからいいんだけど。