第10章 夏休み4
店が空いてるから、聞こうとしなくても2人の女子のような会話はほぼ筒抜けで聞こえてくる。
「潤くん料理するんだね」
「なんか趣味らしいよ」
「潤くんのお弁当美味しいの?」
「めちゃくちゃ美味い」
ニノはやたら楽しそうだし、智も諦めたのか普通に答えてる。
「あれだけカッコよくて、料理もうまいとかズルいね」
「翔くんは料理出来ないもんね」
「翔ちゃんはそこが可愛いの!」
「可愛い?」
「ギャップ萌えって言うの?普段しっかりしてるのに不器用さんとか可愛すぎるでしょ」
「そういうもんなの?」
「そういうもんなの!」
俺はそう言うニノのが可愛いと思うけどな。
てかニノは本当に翔くんが大好きなんだな。
分かってても地味に胸に刺さる。
でもそんなのニノが知るはずもなくて。
コイバナは続く。
「俺も潤くんのマネして翔ちゃんにお弁当作ってみようかな」
「いいね、翔くん絶対喜ぶよ」
「胃袋つかめるかな?」
「それはニノの腕次第じゃない?」
「もう!意地悪!自分は潤くんにつかまれてるくせにー!」
「うるさいなぁ」
ニノに頬をつつかれて、智が頬をピンクに染める。
いや、っていうかさ···
「潤くんに料理習いに行こうかな」
「ニノ1人で?」
「1人で。潤くんと2人きりで料理する」
「······だめ」
「ヤキモチ!智可愛いー!1人でなんて行かないよーだ!」
「からかったの?!ニノ!!」
「きゃー!ごめんって」
プンプン怒る智も、笑いながら謝るニノも、きゃいきゃいしてる様子はとても可愛いんだけど。
え?いつの間にか智と潤もくっついたわけ?
思いがけない展開に軽く混乱してたら
「ねぇ、まーくん。あの子たち男の子よね?」
同じくニノたちの会話を聞いてたらしいおばさんに確認された。
「うん、男だよ」
「そうよね。見た目も会話の内容も可愛いけど、男の子よね」
妙に感心したような口調なのがちょっと面白かった。