第1章 恋に落ちる
ーNsideー
朝、目覚ましが鳴るより早く目が覚めた。
昨日は一度に色んなことが起こりすぎて、精神的に疲れてたんだろうな。
まだ早い時間だったのに、翔ちゃんからの返信を読みながら、そのまま眠ってしまったみたいだ。
起きたら手にスマホを握ったままだった。
昨日のこと、夢じゃないよね?
スマホには翔ちゃんからのメッセージがちゃんと残ってる。
うん、夢じゃない。
昨日は
男に告白されて
そのまま襲われかけて
王子さまに助けられて
その王子さまに恋をして···
人生初体験のオンパレードだった。
丸山くんのことを思い出してぞわっと鳥肌が立って、慌てて翔ちゃんの顔を思い浮かべる。
それだけで少し心が落ち着いた。
今まで恋愛自体にあまり興味がなかった。
なんか面倒くさくて。
友だちと遊んでる方が楽だし楽しいし。
それ以前にモテなかったしね。
だから志望校が男子校なのも何とも思ってなかった。
まさかこんなことになるなんて···
人生て何が起こるか分からない。
翔ちゃんとの待ち合わせ時間は、いつも俺が家を出る時間よりかなり早かった。
翔ちゃんは朝のラッシュが嫌で、毎日早めに学校に行ってるんだって。
俺んちは近いから何時でもいいよって、翔ちゃんに合わせた。
何だかソワソワしちゃって。
鏡の前で何度も寝癖チェックしたり制服を確認したりしてしまった。
普段そんなことしないから、姉ちゃんが面白そうに見てた。
落ち着かなくて約束の時間より早く家を出る。
うちの前に出ると公園が見える。
そうしたら、もう翔ちゃんがいた。
まだ10分前なのに。
本か何か読んでるみたいで、俺には気付いていない。
ちょっと驚かせちゃおうかな。
イタズラ心がわいてきて。
俺は静かに翔ちゃんに近付くと、気配を消して後ろにそっと立った。
本当は後ろから目隠しして「だーれだ?」みたいなことやろうかと思ったけど。
さすがに恥ずかしくてやめた。
「何読んでるの?」
ちょっと悩んだ俺は結局ごく普通に話し掛けた。
それでも俺の存在に全く気付いていなかったらしい翔ちゃんは
「わぁっ」
めっちゃ驚いてくれた。
目をまん丸にして、なんか可愛い。
うん、満足。