第1章 恋に落ちる
夜、勉強しようと机に向かっていたが、頭の中はカズのことでいっぱいだった。
今日は本当に濃い1日だった。
もしかして夢だったんじゃないかと思う。
自分に都合良く作り上げた夢···
それくらい幸せな時間だった。
カズはかなり怖い思いをしただろうけど、それが俺たちを近付けてくれた。
カズにどうして裏庭にいたのか聞かれた時
嘘はついてないけど、本当のことを全部は話せなかった。
だって、ゴミ置き場に居たのは本当に偶然だけど。
後つけて盗み聞きしてたなんて···
そんな最低なこと絶対言えないだろ。
でも、そのおかげでカズを助けることができたんだ。
やったことはかなり情けないけど、結果オーライだと思うことにしよう。
その後もさ、ヘタレな俺にしてはかなり頑張ったつもりだ。頑張った甲斐もあった。
“隣にいさせて”なんて、そんな可愛いこと言われて。
いや、俺が言わせたんだけど。
明日からはカズの隣にいられる。
ほんの数時間前まで話しかけることも出来ないでいたのに本当に夢みたいだ。
スマホが鳴った。
見るとカズからで
『カズです』
『しつこいかもだけど今日は本当に本当にありがとう』
『翔ちゃんと仲良くなれて嬉しい』
『明日からどうぞよろしくね』
最後におやすみの可愛らしいスタンプ。
カズから連絡が来たことがすごく嬉しくて
思わずニヤニヤしてしまう。
自分の部屋だから隠す必要もない。
『こちらこそ』
『カズと仲良くなれて嬉しいよ』
『楽しい時間をありがとう』
『また明日ね』
急いで返信する。
すぐに既読がついて、それだけのことなのにまた嬉しくなった。
俺は可愛いスタンプなんて持ってない。
今まで必要性を感じなかったから。
でもこれからこうやってカズとやり取り出来るなら必要かも。
勉強そっちのけで真剣にスタンプショップとにらめっこして、いくつか購入してみた。
こんな些細なことがすごく楽しい。
恋ってすごい。
今までこんな風に人を好きになったことなかった。
幼稚園や小学校の時、可愛いなって思う子やいいなって思う子はいるにはいた。
その時はそれが好きってことだと思ってた。
でも違った。
今のカズへの気持ちは全然違う。
もしかしたらこれが俺の初恋なのかもしれない。