第10章 夏休み4
ーAsideー
「いらっしゃいま···」
店の扉が開いて。
振り向いて声を掛けようとしたまま固まってしまった。
「雅紀いたー!」
「わー、本当に働いてる!」
なぜなら、そこにニノと智がいたから。
2人は興味津々な顔で俺と店の中を見ている。
ここは親戚のおばさんがやってるカフェで。
そんな大きい店じゃないんだけど、夏休みにバイトの子が帰省してしまうとかで、人手が足りないからと短期バイトに駆り出されてる。
連絡も何もなかったし、まさかここにニノたちが来るなんて思ってなかったからびっくりしちゃって。
固まって動けないでいる俺を、ニノが面白そうに覗き込む。
「驚いた?」
「驚いた」
素直に答えたら
「やった!」
「サプライズ成功だね!」
2人はイタズラに成功した子どもみたいにキャッキャと喜ぶ。
いや無邪気で可愛いけども。
「何しに来たの?」
「え?雅紀に会いに」
ニノが可愛く笑ってさらりと言うからきゅんときた。
くそー、基本ツンツンしてるくせに!
たまにこうやって可愛いこと言うんだよ。
「まーくん?お友だち?」
入口で喋っちゃってたら、おばさんが近付いてきた。
「はじめまして。雅紀のクラスメイトの二宮です」
「大野です」
基本的に人見知りな2人だけど、俺の親戚だって分かったんだろう。
ニノも智もニコニコと可愛い笑顔を振り撒きながら挨拶するもんだから、おばさんの目尻が下がる。
「まぁ、2人とも可愛い♡まーくん、早く席に通してあげて」
「はーい。こっち来て」
空いてる席に案内する。
「ご注文は?」
「なんか店員さんっぽい」
「店員だよ!もう、何にするの?」
働く俺が珍しいのか2人ともニヤニヤしてて、なんだか気恥ずかしい。
「俺アイスコーヒー」
「俺はアイスティー」
「アイスコーヒーとアイスティーね。ちょっと待ってて」
オーダーを伝えにいくと、聞こえてたのかおばさんが既に用意してくれていた。