第10章 夏休み4
ーSsideー
毎年恒例の家族旅行。
正直高校生にもなって家族旅行って···と思わなくもないが、弟はまだ小さいし、妹も小学生だし。
妹弟たちに家族の思い出を···という親の気持ちも分かるから、特に反抗するでもなく普通に参加していたけど。
今年は本当に行きたくなかった。
だって、カズと1週間も会えない!!
去年は俺が忙しくて国内の近場だったが、今年は部活も生徒会もないならとハワイになった。
それこそカズとこんなに親しくなる前から決まっていたから、今さらキャンセルも出来ないし。
そもそも“カズと一緒にいたいから”なんて理由を親に言えるわけもない。
昨日、出国前にカズと会ってきた。
カズは笑顔で楽しんできてねって言ってくれたけど、どこかさみしそうに見えて。
俺に会えなくなることを少しでもさみしいと感じてくれてるのかと思ったら、堪らない気持ちになった。
いや、俺がめちゃくちゃさみしいから、カズもそうであってほしいっていう俺の願望がそう見せただけかもしれないけど。
今日、たった1日会えなかっただけで俺はもう辛くて。
旅行自体は楽しいけれど、どこに行っても何をしていてもカズを想ってしまう。
一緒に居られない分、せめて自分の見たものや感じたことをカズと分かち合いたくて。
家族にも引かれるほど写真を撮りまくった。
全部カズに送るつもりだったけど
「お兄ちゃん、あんまりやり過ぎるとカズくんに引かれちゃうよ」
舞に真顔で言われて、思いとどまった。
いや、っていうかさ。
「なんでカズに送るって分かるんだよ!?」
「違うの?」
「···違わないけど」
一言もカズに送るなんて言ってないのになんで分かるんだ!?
「ほどほどがいいと思うよ。嫌われたくないでしょ?」
焦る俺に対して、舞は至って冷静で。
「···はい、そうします」
うっかり敬語で答えてしまった。
うぅ、女子って怖ぇ!!
でもカズに嫌われるのは困る。
舞の忠告を素直に受け入れ、送る写真を厳選することにした。