第10章 夏休み4
「“智独り占め♡”って送っといた」
「そんなん送られても困るだけだろ!」
「潤くんヤキモチ妬いちゃうかもね」
「ねぇ、人の話聞いてる?」
「聞いてなーい」
うふふって楽しそうに笑ってるのを見ると、まぁいっかって気になっちゃうんだからやっぱり俺はニノに甘い。
「潤くんは?写真送ってくれないの?」
「···送ってくれる」
興味津々なニノにスマホを開いて見せる。
翔くんほどの量じゃないけど、潤も時々写真を送ってくれていた。
「絵の写真が多いね」
「色んな美術館行ってるみたい」
有名なのもそうじゃないのもあるけど、潤が気に入ったものがあると撮って送ってくれる。
「美術館で絵の写真撮っていいんだね。日本だとダメな所が多いのに」
「ダメなのもあるけど、撮っていいのが多いみたいだよ」
あとはちょっとした路地裏とかマルシェとか。
動物や空の写真なんかもある。
「なんか写真がオシャレ~!」
「フランスだから?」
「潤くんが撮ってるからじゃない?」
前に潤に俺が見てる世界を見てみたいって言われて、その時はピンとこなかったけど。
潤の撮った写真を見て、ちょっとだけ分かった気がした。
あぁ、これが潤の見てる世界かぁって。
送ってくれるのはたぶん潤が好きなものや気になったものの写真ばかりで。
見ていると少しだけ潤の心に触れたみたいな、そんな感覚になる。
「智やわらかい顔してるね」
潤の写真を眺めてたら、嬉しそうな顔したニノにそんなこと言われて。
「どん···」
「あ、翔ちゃんからだ♡もしもし?」
どんな顔だよって聞こうとしたら、タイミングよくニノの携帯が鳴って俺の言葉はそのまま流されてしまった。
ま、いーけどね。
嬉しそうに翔くんとおしゃべりするニノ。
ハワイは今、夜なのか。
フランスは早朝だよな。
潤まだ寝てるな。
みんなバラバラな場所にいて、時間も違うなんてなんか変な感じだな。
ぼんやりとニノが電話する声を聞きながら、そんなことを考えてた。