第10章 夏休み4
夕方まで勉強したり、お喋りしたりして。
そろそろ帰らなきゃって空気になってきて。
明日はどう誘おうかと思っていたら
「あのね、うちも親は共働きなんだ。姉ちゃんは受験生で塾で」
カズがそう切り出してくれた。
「うちも誰もいないから、あの、嫌じゃなかったら明日はうちに来ない?」
思いがけないお誘いに心が弾む。
そんなの断るわけがない。
「嫌じゃないよ。カズが迷惑じゃなければぜひ」
「良かった!じゃあ、待ってるね」
喜びを隠しきれず、頬が緩んでしまう。
でもカズもなんだか嬉しそうにニコニコしてる。
家まで送ろうとしたけど、まだ明るいからと断られて。
せめて駅まではと一緒に歩いてたら、道で妹と鉢合わせた。
「お兄ちゃん」
「舞、帰るとこ?」
「うん」
舞はじっとカズを見つめると
「もしかしてヘアクリップ貸したお友だち?」
突然言い当てるからびっくりした。
カズも驚いた顔をしてたけど
「うん、お兄さんと同じクラスの二宮和也です。ヘアクリップ貸してくれてありがとう」
小学生の妹相手でも可愛い笑顔で丁寧にお礼を言ってくれた。
「櫻井舞です。兄がお世話になってます」
「こちらこそ」
「これからも兄をよろしくお願いします」
2人でペコリと頭を下げると、舞はさようならとカズに手を振って去って行った。
「妹さん小学生だったよね?しっかりしてるね」
「うん、生意気なことも言うけど。女子だし、しっかりしてると思う」
「翔ちゃんに似てるね」
「そうかな?」
そんな話をしてたらすぐ駅に着いてしまった。
「今日はお邪魔しました。また明日ね」
「うん、また明日」
カズを見送って家に帰ったら
「本当に可愛い人だね」
舞に意味ありげに微笑まれてヒヤッとした。
すっかりカズを気に入ったようだけど。
小学生でも女子だ。
鋭くて怖いわ。