• テキストサイズ

キミのとなりで【気象系BL】

第10章 夏休み4


ーOsideー


いつの間にか、俺の中で美術室に潤がいることが当たり前になっていたらしい。

だから潤がフランスに旅立った日、集中力が切れて振り返ったそこに、潤がいないことに戸惑ってしまった。

いるはずないのに。
いないって分かってたのに。

なんだかさみしくて···

さみしいと思ったことに、更に戸惑った。

潤に聞かれたときは全然そんな風に思わなかったのにな。

実際に潤がいないとこんなにさみしいんだ。


俺は元々1人が好きなんだけど。

潤と過ごす時間は、そんな俺にとってもすごく自然で居心地が良かったんだと気付いた。

お腹が空いていたからパンをかじるけど、大好きだったはずのそれがすごく味気なく感じる。

潤とお喋りしながら、潤の作った弁当が食べたい。

なんか胃袋がっつり掴まれてんな、俺。


マメなことに、潤は出発前に連絡してくれて。

俺がいなくてもちゃんとしたもの食えって、ご飯の心配してて。

かじってたパンを見つめて、バレたら怒られるかもと思ったら少し笑えた。

あとは、油断するな気を付けろって。

先週さんざん言われたことをまた言われた。

ふいに俺のことを可愛いって連呼する潤を思い出してカッと顔が熱くなる。

本当になんなんだろ。

変なやつに襲われるなんて。
男だしそんなことあるわけないのにさ···

いや、でもニノの身には起こったから全くないとも言えないのか?

でもニノは可愛いからなぁ···


“智のが可愛いよ”


急に潤のセリフが脳内で再生されて、慌てて首を振る。

潤はどういうつもりで、あんなこと言ってんだろ?

何考えてんだか分かんないよなぁ···

自分の気持ちだって分かんないんだから、人の気持ちなんてもっと分かんないよ。

ぼんやりと空を見上げる。

潤はまだ飛行機の中だよな。
今どの辺だろ?

見えるはずのない飛行機を探しながら、気付いたら潤のことばかり考えていた。

/ 803ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp