第9章 夏休み3
今度は文句を言うこともなくされるままだったニノが優しい目で俺を見る。
「それはさ、潤くんが智にとって特別ってことなんじゃないの?俺にとっての翔ちゃんみたいに」
ニノにとっての翔くん···
それは恋愛感情として好きってことだろ?
「違う。ニノは翔くんと手繋いだら嬉しいんだろ?俺は違ったもん」
「感じ方は人それぞれだと思うけど。でもね、俺だって翔ちゃんと手繋ぐのすっごいドキドキするよ。智と一緒」
「一緒なの?」
「うん」
俺が潤にドキドキしたのは、ニノと一緒?
でも俺が好きなのは···
「俺はニノが好きだよ」
「俺だって智のこと大好きだよ」
ニノに好きだと告げると、ニノもすぐに答えてくれる。
「でも翔ちゃんへの気持ちと智への気持ちはちがう。2人とも大好きだけど、違う好きなの」
好きの種類が違うって言われても、ショックとかは全然ない。
だってそこに優劣の差なんてないって分かるから。
それにショックじゃないのは、俺のニノへの気持ちがニノが俺へ向けてくれる気持ちと同じだから?
やっぱり恋愛感情じゃないから?
じゃあ潤への気持ちは···?
「智もそうなんじゃないの?」
「·········分かんね」
ニノの言ってることは分かるけど。
自分がどうなのかは分からない。
そんな俺を見てニノは微笑んだ。
「今無理に分かんなくていいよ。でも苦しくなったり話聞いてほしくなったら、ちゃんと俺に話してね」
「うん···」
優しい言葉に素直に頷いたけど
「ってか、ニノもだよ!何かあったらちゃんと話して!もう絶対海のときみたいに突然いなくならないでよ!」
海でのことを思い出して、ニノにも釘をさす。
「······うん、ごめん。もうしない。ちゃんと反省してます」
ニノはバツの悪そうな顔になって頭を下げた。