第9章 夏休み3
「海でね、翔ちゃん言ってたの。心配で禿げそうだから側にいてって。まだ禿げたくないんだって」
それくらいニノが大切で心配ってことなんだろうけど。
ハゲって···他に言い方はなかったのか?
「翔ちゃんが禿げちゃったら困るからね。翔ちゃんは髪の毛なくてもカッコいいだろうけど、ふふっ」
ほら!ニノ分かってないじゃん。
面白がっちゃってる。
「だから手を繋いでたんだってこと?」
「そう。俺だってこれ以上翔ちゃんに心配掛けたくないし···それだけだよ」
絶対それだけなはずないのに。
きっぱり言い切られて、それ以上言えなくなってしまう。
するとニノがふわりと表情をゆるめた。
「でもね、翔ちゃんが心配性なだけでもさ。手を繋げたら俺は嬉しいって思っちゃうの」
今日ずっと翔くんと繋いでた右手を左手でぎゅっと包み込んで、ニノがはにかむ。
「理由なんて何でもいいんだよ。手繋げるだけで俺は幸せだもん」
「ああ、もう!本当に可愛いなぁ!」
可愛い顔して可愛いこと言うから思わず力いっぱい抱き締める。
こんなの翔くん見たら倒れちゃうんじゃないかな。それくらい可愛い。
「ちょっ、くるしい~!!」
力を入れすぎたらしい。
腕の中でニノがジタバタ暴れる。
「もう!バカ力なんだから!」
「ごめん、ニノがあんまり可愛いからさ」
「可愛くないし!意味分かんない!」
腕の力をゆるめても、ニノはプンプンしてる。
「そんな怒んないでよ」
「まぁ、いーや」
本気で怒ってないのは分かってたけど、ニノはあっさり態度を変えるとニヤリと笑った。
「智だって今日潤くんと手繋いでたじゃん。智こそラブラブだったね?」
「あれはっ···違うっ!」
急にあまり触れてほしくない話題になったから、思いきり動揺してしまった。