第9章 夏休み3
そんなカズを見ていたら、今朝潤と話してて引っ掛かったことを思い出した。
その時は何が気になったのかまでは分からなかったんだけど。
智くんのことを話す潤の声が甘い気がしたんだよ。
それを話すとカズの目が輝いて
「翔ちゃんもそう感じたなら、やっぱりそうなのかな」
嬉しそうに潤たちを見つめた。
「もし本当にそうだとしたら、どうするの?」
「別にどうもしないよ。でも2人が幸せになるのに俺に手伝えることがあるならしたいなって思う」
優しい笑顔だった。
純粋に友だちの幸せを願ってるんだって分かる。
綺麗な笑顔に見惚れつつ、この流れでずっと気になっていたことを聞いてみようかと考える。
友だちを大切に想う純真なカズに、俺の下心溢れる質問をぶつけるのは若干心苦しいけど。
こんなこと自然に聞ける機会なんてもうないかもしれない。
「カズは、その···男同士の恋愛をどう思う?気持ち悪いとか思わない?」
「思わないよ。好きになっちゃう気持ちに男も女も関係ないと思う」
思いきって尋ねてみれば、カズはあっさりと答えてくれた。
潤たちのことを話す様子から偏見はなさそうだとは思っていたけど、カズの口からはっきり聞けて安心した。
カズは怖い経験をしてるから、どうなんだろうって不安がずっとあったんだ。
偏見がないからって、カズが俺の気持ちを受け入れてくれるかは別問題だけど。
「翔ちゃんは?気持ち悪いって思う?」
「俺も思わないよ」
逆に心配そうに聞かれて、すぐに否定すると
「良かった!」
カズはなんだか本当に安心したように笑った。
まるで自分のことみたいに嬉しそうに見えるのは、それだけ智くんのことを大切に思っているってことなんだろう。
「一緒にあの2人のこと見守ろうね」
「ああ」
カズはしばらくニコニコしていたけど、ふと真顔になって
「質問ついでに、もう1個聞きたいことがあるんだけど···いい?」
なんだか聞き辛そうに口を開いた。