第9章 夏休み3
ーSsideー
流れるプールに来た。
専用の浮き輪の貸出しがあったから、1つだけ借りてカズにはめる。
「翔ちゃんのは?」
「浮き輪2つだと、その分カズと離れちゃうから」
するっとカズの後ろに腕を通して
「一緒につかまらせて?」
浮き輪につかまった。
カズは少し照れた顔をしたけど、ハッとしたように
「さっきまで体調悪かったんだから翔ちゃんが使って?俺が掴まるから」
浮き輪をはずそうとするからとめる。
「いや、カズが使ってて。浮き輪の中に居てくれた方が安心出来る」
そうしたら他の人との接触が減るから。
俺以外誰にも触らせたくない···
そんなの無理だって分かってるけど。
カズを独り占めしたいって思っちゃうんだよ。
「変わらなくない?」
「全然違うんだよ、俺の気持ちがね」
「そうなの???」
カズは分かんないって首を傾げてるけど、俺が変わる気がないのは伝わったみたい。
「本当に体調大丈夫?」
「もう大丈夫だから、ね」
カズを安心させるように笑顔を向けた。
2人で1つの浮き輪につかまって、まったりと流れるプールを漂う。
「こうやって流れてるだけでも楽しいね」
「そうだね」
人は多いけど別に泳ぎたいわけでもないし、俺はニコニコしてるカズを見てるだけで楽しい。
しばらく漂っていたらカズが顔を寄せて耳元で囁いてきた。
「ねぇ、翔ちゃん。あの2人どう思う?」
「どうって···」
少し離れたところにいる潤たちに視線を向ける。
俺たちと同じように2人で1つの浮き輪を使ってる。
「俺ね、夏休み入ったくらいから、あの2人仲良くなったなぁって思ってたんだ。お互い意識しあってるっていうか」
「もしかして、前に今度話すって言ってたのってこのこと?」
「そう。確信がなかったから翔ちゃんに言えなかったんだけど、さっきの見たらさ」
カズはちょっと楽しそうな顔をしてた。