第9章 夏休み3
翔ちゃんはご飯を食べるときも手を離さないでくれて。
俺左利きだから、こういう時便利だ。
手を繋いだままでもご飯食べれるもん。
ちょっと食べにくいけど、それ以上に嬉しいから気にならない。
ハンバーガーだから片手で十分だしね。
でも翔ちゃんはカレーだから食べにくくないかなって見たらちょうどポロッとこぼすところで。
ばっちり目が合っちゃって、翔ちゃんはバツが悪そうに笑った。
そうだ···翔ちゃん不器用なんだった。
いつも食べるの早いのにまだたくさん残ってる。
やっぱり今は離した方がいいのかも。
そっと手を引こうとしたら力強く止められた。
「離さないで」
真面目な顔で言われて、きゅんとする。
でも食事の邪魔じゃないのかな。
「ご飯食べにくくない?」
「ちょっとね」
翔ちゃんはこぼすところを見られてるからか恥ずかしそうに認めた。
「でも離さないよ」
「翔ちゃん···」
心配してくれてるだけだって嬉しい。
俺だってずっと繋いでたい。
翔ちゃんの左手と俺の右手。
このまま溶けてくっついちゃえばいいのに。
そうしたら、一生一緒にいられるのに。
···なんて。
そんなバカなことを考えちゃうくらい離れたくないって思ってる。
「俺が食べさせてあげる」
スプーンを借りて、一口すくって翔ちゃんの口に運ぶ。
「あーんして?」
「あーん」
翔ちゃんは素直に口を開けて食べてくれた。
美味しそうに食べる翔ちゃんが可愛い。
嬉しくなって全部食べさせてあげて、最後にナプキンで口を拭いてあげた。
「ありがとう、ごちそうさま!」
「どういたしまして」
翔ちゃんと目を合わせて微笑んでいたら、智と潤くんがなんとも言えない顔で俺たちを見てた。
智たちはもう手を繋いでないし、ご飯も普通に自分で食べてて。
本当にさっきはなんで手を繋いでたんだろ?
どうせならずっとマネしてればいいのにって思ったけど、口に出したらまた智が怒るかな。