第9章 夏休み3
ーNsideー
智たちに置いてかれて。
翔ちゃんの具合が悪いのに2人とも薄情もの!なんて、ちょっと怒りたくもなったけど。
すぐに、智と潤くん2人きりになりたかったのかもしれないと思い直した。
だって智には否定されたけどさ。
あの後も日に日に仲良くなってる気がするんだもん、あの2人。
冷たい飲み物を飲んだら、翔ちゃんが少し回復したから温泉みたいな温水プールに移動した。
「ごめんね。カズもスライダー行きたかった?」
「ううん、全然!」
申し訳なさそうな翔ちゃんに笑顔を向ける。
「スライダーなんて行かなくていい。俺は翔ちゃんと一緒に楽しめるのがいいもん」
本当にそう思ってるからね。
繋いだ手から伝わるといいな。
握ってる手にきゅっと力を込める。
そうしたら翔ちゃんの表情が柔らかくなって、ちょっと嬉しくなった。
お風呂に浸かるみたいに、翔ちゃんと並んで座る。
「ここ温泉みたいで気持ちいいね」
「そうだね」
「いつか本当の温泉にも行きたいね」
「いつか行こうか」
小指を出したら、翔ちゃんもにっこり笑って自分の指を絡めてくれた。
繋いでない方の手で指切り。
「約束ね」
「うん、約束」
いつか分からない未来の約束が嬉しかった。
その約束が叶う日まで側にいるって翔ちゃんも思ってくれてるってことだもんね。
それなら温泉行くのはおじいちゃんになってからでもいいよ。
それまでずっと友だちでいてね。