第9章 夏休み3
「なんでだよ!やだよ!」
急いで手を振りほどこうとしたのに、潤は離してくれない。
「だって、いちいち寄ってくるの相手するの面倒じゃん?そんな煩わしい思いしないで遊びたいじゃん?」
「それは···そうだけど···」
でも無理だって!
俺たちとニノたちとは違うんだから。
「あれはニノが可愛いから成り立つんであって···」
俺じゃダメでしょ!
そう続けようとしたのに。
「智も可愛いから問題ないって」
「なっ···」
さらりと可愛いとか言われて、言葉に詰まってしまった。
俺が可愛いわけないし、そもそも男なんだから可愛いなんて言われたって嬉しくない!
嬉しくないはずなのに···
「ニノも可愛いけどさぁ。俺は智のが可愛いと思ってるよ」
潤に真顔でそんなこと言われたら。
どうしよう···なんか嬉しい···かも。
いや、なんで嬉しいんだよ!おかしいだろ!
「翔には内緒な」
動揺する俺には気付かないで、潤は涼しい顔してて。
何なんだよ、もう!
ちょっと腹が立ってきた。
潤がニノより俺のが可愛いって言ってたよって?
どんな顔して言うのさ!
そんなこと言えるわけないでしょ!
わざわざ念押ししないでも言わないよ!
なんだかイラッとしちゃって。
「とにかく離して!」
もう一度手を離そうとしたら
「そんなに俺と手を繋ぐの嫌?」
今度は悲しそうな顔された。
もう本当に何なの?
そんな顔しないでよ。
「嫌っていうかさ···だって潤は嫌じゃないの?男と手繋ぐなんて」
「全然。智とだからかな?」
本当にズルい。
そんな言い方して。
そんな無邪気な笑顔見せないでよ。
「···俺も···潤となら嫌じゃない、けど」
なんか悔しいけど。
小さい声で呟いたら、潤が本当に嬉しそうな顔したから。
「もういい!早くスライダー行こ!」
繋いだ手を引っ張って歩き出した。