第9章 夏休み3
ーOsideー
まぁ、こうなるだろうとは思ってた。
声を掛けてきた女の子を適当にあしらってる潤の隣で小さくため息を吐いた。
潤と2人になったら、すぐ捕まっちゃって。
まだスライダーにもたどり着けずにいる。
ニノたちと別れた途端にこれだもんなぁ。
さっきまで全然なかったのにな。
海の時といいガッツのある女子が多いよねぇ。
「智、行こう」
潤はまだ何か言ってる女の子たちにさっさと背を向けると、ぼーっとしてた俺の背中を押して歩き出した。
相変わらずモテるよなぁ。
潤は翔くんみたいな対応はしないからまだいいけど、今日もこれがずっと続くのかな。
知らず知らず、またため息がこぼれた。
潤はそんな俺の顔をじっと見ると
「やっぱり、ああいうのいちいち相手すんの面倒だよな?」
「え···うん、まぁ」
「じゃあ協力してくれる?」
おもむろに自分の着てたラッシュガードを脱いで、何故か俺に着せた。
ラッシュガードなんて海では着てなかったのに、今日は焼けたくないのかなーと思ってた。
それを俺に着せる意味が分からないんだけど。
「何?」
戸惑う俺にはお構い無しに、今度は俺の前髪をいじりだす。
ねじって留められたのが分かった。
「うん、いいじゃん」
俺をじっくり眺めた潤はなにやら満足そうだ。
「いや、本当に何なの?」
「俺考えたんだよ」
「何を?」
「女の子に絡まれなくなる方法」
おお!
そんな方法があるならぜひ教えてほしい。
真面目に耳を傾けると
「今日さ、翔たちは誰からも声掛けられてないじゃん?海の時もさ、ニノが迷子になった後はさ」
「······うん」
なんとなく嫌な予感がするのは気のせいか。
潤はニヤリと笑うと、俺の考えを肯定するように俺の手を握った。
「だから、あいつらの真似すればいいと思ったんだよね」
あああ、気のせいじゃなかったよ!