第9章 夏休み3
ーMsideー
平日だけどやはり夏休み。
プールはそこそこ混んでいた。
翔は最初からしっかりニノの手を握ってる。
海でのことがトラウマになってるのか、絶対離さないという強い意思を感じる。
そんな翔にニノは嬉しそうに寄り添って、ぴったりくっついていて。
周りの目なんて全く気にせず堂々としてる。
水着って言ってもハーフパンツだし、ラッシュガード着てるし。
普通のカップルだと思えばそう見えるか?
···うーん、どうだろ?
何はともあれ2人がラブラブオーラを放っているおかげか、海の時みたいに女の子が寄ってくることもなく、おかげさまで快適に遊べている。
波のプールやらアスレチックやら楽しんで。
テンションが上がったところで、4人で乗れるというゴムボートのスライダーに乗った。
怖じ気づく翔たちを半ば強引に乗せたんだけど、まぁ予想通りっちゃ予想通りに翔が屍のようになった。
「翔ちゃん大丈夫?」
「大丈夫···大丈夫だけど、ちょっと休ませて」
青い顔してベンチでへたっている翔を、ニノが涙目で心配している。
ニノは意外と大丈夫だったようだ。
「情けないとこ見せてごめん」
「情けなくなんてないよ。無理しないでゆっくり休もうね」
手を握ったまま見つめ合って。
いつもの如く2人の世界に入ってしまったので、とりあえず放っておくことにする。
「智まだスライダー行くだろ?」
「うん、行きたいかな」
「じゃあ別行動するか」
「そうだね。翔くんにはニノが付いてれば大丈夫だよね」
智とサクッと決める。
「じゃあ、適当に連絡するから」
「え?なに?」
「また後でね」
「ええっ?」
今日はお互いスマホがあるから合流するのもどうとでもなるだろ。
話を全然聞いてなかった2人は何だか分かっていないようだったけど
「これで2人きりで思う存分イチャイチャ出来るね」
「俺たちがいてもお構い無しだけどな」
「あははっ」
「ま、こっちはこっちで楽しもうぜ」
驚く2人を置いて智とさっさと歩き出した。