第9章 夏休み3
ーSsideー
母親にもらったプールの招待券。
本当に期限ギリギリだったけど、潤と智くんも一緒に来れて良かった。
雅紀には申し訳ないけど、今回は4人で楽しませてもらおう。
今日もしっかりカズにラッシュガードを着せる。
「カズ今日も髪の毛可愛いね」
「なんか、出掛けるって言うと姉ちゃんが張り切っちゃうんだよ」
カズはお姉さんと仲が良い。
「海行ったときはぐしゃぐしゃになっちゃったから、今日は絶対崩れないようにってムキになってた。別にそんなこと頑張る必要ないのにね」
変なのって笑ってるけど、特に嫌がってる感じはしない。
それに俺は密かに楽しみにしてたりする。
もちろん何にもしてなくても可愛いけど、髪の毛アレンジしてるとまた違う可愛さがあるんだよな。
お姉さん今日も可愛いカズをありがとうございます。
心の中でお姉さんに手を合わせた。
日焼け止めもしっかり塗って。
「カズ、スマホ貸して」
「何で?」
カズは首を傾げながらも素直に渡してくれる。
受け取ったそれを用意しておいた防水ケースに入れると、カズの首から下げた。
自分のも同じようにしてから、しっかりカズの手を握る。
「今日は絶対離れないけど、何かあった時のためにスマホはちゃんと持っててね」
「うん」
カズがきゅっと手を握り返してくれたから、ちょっと安心する。
もう海の時みたいな思いはしたくない。
防水ケースも海の後すぐ用意しておいた。
プールに行く約束をしたからね。
残りの荷物は全部コインロッカーへ入れて身軽になる。
「もう行ける?」
声を掛けると、もう潤たちも準備出来ていた。
見たら潤もしっかり防水ケースを持ってる。
「潤も用意したんだ?」
「教訓は活かさないと」
カズがいなくなった時のことだよな。
やっぱり同じことを考えてたようだ。
「でも智は持ってないから目を離さないようにしないとな」
その声に、ちょっとだけ引っ掛かるものがあった。
なんだろ?なんか···
「翔ちゃん早く行こ」
引っ掛かったものの正体が分からないうちに、カズに手を引かれて。
ま、いっか。
カズの可愛い笑顔に流されてひとまず考えるのをやめた。