第8章 夏休み2
「なぁ、腹減らない?俺たち飯食い損ねてんだけど」
空気を変えるように、潤がお腹をさすった。
ご飯のことなんかすっかり忘れてた。
気付けばもうお昼をだいぶ過ぎてオヤツの時間のが近い。
意識したら途端にお腹が鳴った。
「えっ?食べてないの?みんなも?」
揃って頷くとニノはますますシュンとした。
「ごめんなさい」
「いいよ。ニノはお腹減ってない?」
「お姉さんたちにご飯食べさせてもらったから···」
「もう気にすんな!」
申し訳なさそうに謝るニノの肩を雅紀が叩いた。
「何か買いに行くか」
各々財布を掴むと
「あ、じゃあみんなが買いに行ってる間にお姉さんたちにお礼言ってくるね」
ニノがテントを出て行こうとした。
「カズ待って!」
慌てて翔くんが引き留める。
「ニノ···反省したんじゃなかったの?」
「え?お姉さんたちのところに行くだけだよ?」
ニノはキョトンとしていて、思わず全員でため息を吐いてしまう。
「俺もついてく」
翔くんがニノに近付いた。
「だって翔ちゃん···」
「潤」
「適当に買っとくよ」
「頼む」
ニノが何か言う前に潤と短いやり取りを済ませると、翔くんはにっこり笑ってごく自然にニノの手を取る。
「行こうか」
真っ赤になるニノには構わず手を繋ぐと、そのまま出ていった。
翔くんがあまりにも堂々としていたから誰も何も言えなかった。
「翔くんてば大胆」
「ニノがいなくなったのがよっぽど堪えたんだろうな」
「でもさ、あれなら女の子も声掛けられないんじゃない?」
雅紀が可笑しそうに笑う。
「確かに」
「2人にしたら良いことしかないな」
潤と目が合って、俺たちも笑ってしまった。
「よし!俺たちも行くか」
荷物を見ててくれると言う風間くんの欲しいものを聞いて、雅紀と潤と海の家に向かった。