第8章 夏休み2
「カズ、お姉さんたちのところで間違えてお酒飲んじゃったみたいだよ?それで寝ちゃったんだって。覚えてる?」
翔ちゃんが教えてくれた。
そう言われたら、そんな気がする。
お姉さんたちと喋ってたら急にすごく眠くなって···
うっすらと思い出してきた。
俺あのまま寝ちゃったのか。
お姉さんたちにも迷惑掛けちゃった。
でも何で翔ちゃんが知ってるんだろう?
「カズがいなくなったって聞いて潤たちと探してたんだよ。そうしたらお姉さんの1人とバッタリ会って···」
「それだけで分かったの?」
「智くんが大きな声でニノって言ったのが聞こえたみたいで、向こうから話し掛けてくれたんだ」
「そうだったんだ···」
状況が少しだけ分かった。
「カズがいなくて···探しても全然見つからなくてすごく心配した」
まだ少しぼんやりしていたら、突然翔ちゃんに抱き締められた。
「カズが怖い目にあってるんじゃないかって、考えるだけで気が気じゃなかった」
力が強くて苦しいくらいで。
驚いて見上げた顔は苦しそうに歪んでいた。
翔ちゃんが本当に心配してくれてたことが伝わってくる。
俺、本当に何やってんだ。
勝手な行動して、いろんな人に迷惑掛けて。
翔ちゃんにもこんな顔させるなんて。
「ごめんなさい」
ものすごい自己嫌悪に襲われる。
「本当にごめんなさい」
自分のことばっかで、全然周りが見えてなかった。
みんなのためって思ったけど、余計な心配掛けただけだった。
それに本当の本当はあれ以上翔ちゃんが女の子と居るところを見たくなかっただけなんだ。
全然みんなのためじゃないじゃん。
なんて自分勝手···
じわりと滲んできた涙を見られたくなくて、顔を翔ちゃんの肩に押し付けた。