第1章 恋に落ちる
ーNsideー
心配だから送らせて、なんて言われて
お互いだけの特別な呼び方を決めて
まるで恋人同士にでもなったみたい。
···なんて、さっきからちょっと浮かれてる。
そんなことあるわけないのに。
だって俺は男で
翔ちゃんはみんなの王子さまだ。
好きになっちゃったけど、絶対叶わないって最初から分かってる。
俺なんか翔ちゃんの恋愛対象になるわけない。
そもそも、こんなに素敵な人だから当然彼女がいるだろうし。
分かってるけど···こっそり想うくらいは許されるかな。
少しずつ恐怖心も薄れてきてフワフワした気分でいたら、あっという間に公園に着いてしまった。
何だか別れがたくて···
もう少し翔ちゃんと一緒にいたくて。
送ってくれてありがとう
また明日ねって
バイバイしなきゃって思うのに、言えないでいた。
黙って立ち尽くしていたら
「気分悪い?」
翔ちゃんに心配されてしまった。
「ううん、大丈夫」
「早く休んだ方がいいよね」
「う、ん···あの···」
まだ帰りたくない
1人になりたくない
でもそんなワガママ言えない···
これ以上迷惑掛けられないよね。
おとなしく帰ろうと決めたら
「まだ時間大丈夫?」
何かを察してくれたのか、翔ちゃんからそう切り出してくれた。
「うん」
予定なんか何もない。
「体調が大丈夫なら···良かったらもう少し話さない?せっかく友だちになれたから、もっとカズのこと知りたいな」
キラキラキラキラ
翔ちゃんの笑顔が眩しい。
もうさ、普通さらっとそんなこと言える?
俺が女の子だったら勘違いしてるよ。
自分のこと好きなんじゃないかって。
男だけど勘違いしたくなっちゃうよ。
「···うん。俺も翔ちゃんのこと、もっと知りたい」
素直な言葉が零れてちょっと恥ずかしくなった。
俺はひねくれてるから、いつもだったらこんなこと言えない。
でも可愛くない態度取って翔ちゃんに嫌われるより何倍もいい。
···なんて、考えてることが恋する乙女みたいで、我ながら気持ち悪いな。