第8章 夏休み2
ニノはお姉さんたちのテントに寝かされていた。
俺たちのテントからそこまで遠くない。
でもテントの中で寝てたんじゃ、そりゃ見つからないわけだよ。
ニノは頬をほんのりピンクに染めて、あどけない顔で眠ってる。
腹にタオルを掛けられて、他のお姉さんたちにうちわで扇いでもらって。
まるでお姫さまだな。
「翔ちゃんとお友だち連れてきたよ」
お姉さんが声を掛けると
「え!翔ちゃん!?」
「会えたの?」
「あら!みんなイケメンじゃないの!」
中にいたお姉さんたちが出てきてワイワイと取り囲まれた。
「あの、カズがご迷惑をお掛けしてすみません」
翔はたじろぎながらも、しっかり頭を下げる。
「迷惑なんかじゃないわよ」
「可愛いニノくんとお話出来て楽しかったわ」
「でもあなたたちは心配だったよね、ごめんね」
また謝ってくれる···本当にいい人たちだ。
疑って悪かったな。
「いえ、心配はしてましたけど···あなたたちに一緒に居てもらえて本当に良かったです。ありがとうございます」
翔も同じように感じているんだろう。
何度も頭を下げる翔を、お姉さんたちは優しい目で見ていた。
「カズを連れて帰ってもいいですか?他のみんなも心配しているので」
「もちろんよ」
翔がそっとニノを抱き上げる。
宝物を抱くように大切に。
「本当にお世話になりました」
「ありがとうございました」
3人で深々と頭を下げる。
「ふふっ、気にしないで」
「翔ちゃん、ニノくんを大切にしてあげてね」
「こんなに可愛い子、泣かせちゃダメよ」
何でこの人たちにそんなこと言われるのか分からないみたいで、翔は目を白黒させてる。
それでも
「はい、大切にします···これからもずっと」
腕の中のニノを愛しそうに見つめながら、はっきりとそう言った。
お姉さんたちは少し照れたような眩しいようなそんな顔をして、微笑んで見送ってくれた。